生まれたときにもらった種に
水をあげようと
じょうろに
たくさん水を汲んでいた
少年がいました
だけど、少年は
水を汲んだ帰り道に
少年と同じように
植木鉢に水を欲しがっている
....
空は薄暗いのに
色とりどりの看板や
揺れる木々の葉を
濡れた舗道は律儀に映し出す
冷たく滲んだ風景画を
靴やタイヤが
踏んでいく
ブラインドの隙間から
見ている私の
雨の記憶 ....
「君」を発見するための諸条件ーー
「君」に今、言葉はなく
「君」に今、韻律はない
鏡をのぞけば そこには
もう一人の「君」がいてニタニタと笑っている
世界を救うための ....
何も失うことなく
すべてを放棄するには
消えるだけでいい
だけど、すべてをこの胸に
留めおくことは
どうしてだか、こんなにも難しい
過ぎ去っていくこの春を
刻みこむようにイメージする ....
服がない傘だけ開く
腕をくみにくる女の中で眠る傘が黒い
折れた傘ゴミ箱に挿しこんで本当の笑いかた忘れた
金属製の留め金は
時折きしむ
わたしを
ここに
留めておくもの
家族とか
四季咲きの薔薇だとか
増えていくばかりの本棚とか
愛すべきものたちばかりなのに
長雨のあと
造成地 ....
通り過ぎる風のように
現れては去っていった
出会いと別れはいつも
風のようなものだから
嬉しい出会いにいつも
同時に訪れる不安感は
別れを予測し付き纏い
いつしか諦めとなった
....
トイレットペーパーの芯で
1/10000のスペースコロニー模型を作る
125万平方メートルに1万人が居住するスペースコロニー
1万人がいる狭く閉じた空間は精密な環境下の秩序で成り立っていて
....
透けるような夕刻のさざ波に向かって
餌木を投げる
こういう晩には大イカがやってくるらしい
赤い餌木
黄色の餌木
緑色の餌木、銀色の餌木、紫の餌木
を投げた
....
雨降りから
こっそり逃れるために
少しずつ歩く
小さな黒猫には
首輪もないので
名前もないだろう
彩りある
小さな傘がたくさん
水たまりの
近くにあって
バス停で
トロリーバ ....
世界に
ひっかかっていた頃
一日がこんなにも
短くはなかった
めくるめく
ひと日ひと夜
濃密だった
日々過ぎて
今は
もう
たいらな時間の
うすい夢
過去と ....
今日、月がもも色で
口をつぐむように鳴らす笛が
灯台の{ルビ灯=ラフ}をかすめて
指どおりのよい
髪にまきつく
入りくちは浅くなめらかに
奥はとおくするどい爪のかたち…
荷を ....
弱々しい泣き声を自粛して
見上げる空に満ちるのは
サファイアの海
誰のものとも分かちがたい記憶の潮に
わたしは鼓動をそっと浮かべる
きれいな言葉も醜い言葉も
燃やしてしまえ、落 ....
まるくなった猫の眼 チャイナドレスの黒い髪
いつものことのように 振舞う
カフェは満員だったけど 手を上げると
席を作ってくれる シェルブールから来たギャルソン
もう 彼の故郷に行 ....
ネットスーパーを使うようになった
重たい荷物を
三階まで運ぶのが億劫だから
理由はそれだけじゃない
配達してくれた人が
ちょっとジョニーデップに似てたから
昨日なんか挑発するつもりで
下 ....
何も言えない奴だったけど
いつもじっと私を見ていた
嬉しい時も悲しい時も
いつも私の方を向いていた
私は良い飼い主ではなかったから
抱きしめてやることもしなかった
時たま気まぐれに荒々しく ....
あの頃効いてたクスリが効かなくなって
随分落ち込んだりした
こんなに長い幸福の不在に
存在の耐えられない軽さに
この長い沈黙に
耐えなければならない
言葉の落とし所はいらないよ
僕は不幸 ....
何かを 見詰めようとしたら
今まで 瞳を潤していた 存在を
排除しなければ ならない と
泪ながらに 訴えた夜
あなたは 笑って こう言った
その必要は ないよ
何の為に 右と左が 存 ....
僕は村上という名字なのに
ムラサメさんと呼ぶ人がいた
何度も「僕は村上です!」というのに
ずっとムラサメさんと呼び続けた
初めは冗談か嫌がらせかと思ったんだけれど
ムラサメさんに相談があるん ....
存在の寂しさに耐えきれなくなった時、人の温もりを求めるのか。
存在の優しさに泣きたくなった時、人の許しを求めるのか。
今年の冬は
何時もの細長い島へ避寒に行くのよそうかな
島で 子作りするでもないし
このあたりでも河面も凍らなくなったし
餌の小魚も採りやすいし
あの島の平地にはニンゲンの巣が広がって
....
シトシトシト
今年は梅雨らしい梅雨になった
見上げる空は
銀鼠の色をして
空を低く押え付ける
傘を差す人々が行き来する交差点
女の人は
色使い ....
私、雨に濡れております
髪から雨の雫が
喚くように滴り落ちてくるものですから
ほとほと、いやになりました
雫が喚く
あぁ、うるさい
粉ぐすりは色 ....
たとえば
A集落のaが
B集落のbを殺したとする
bの子b'が大人になって
aの責任を問うた時
aがこう言ったとしたら
どうだろう
当時は力のある集落の者が
力のない集落の者を殺す ....
待ち時間じゃない時間がある
待つことが多いので待ってるように感じる
肩が重くなる
損した気持ちになる
でも雨で良かったと思う
面倒だから目が重たいまま歩く
もうこのにこやかな仮面は
皮膚と同化しているのに
剥ごうとするひとがいる
剥いだらどうなるか
わかっているだろうに
それでもそれが私の素顔だと言って
変わらずキスをしてくれるだろうか
....
火が燃えている、火はささやかに舞い、わずかな黒煙を伴い燃えている。
すでに燃え尽きようとしているその男は、小さなともしびに油を注ぐ。
日が燦々と差す部屋の片隅の小さな戸棚を開けると、油の瓶が並んで ....
足跡を捨てながら
帰り途を急ぐ
その歩数と
掛け算するように
夜の密度が
濃くなっていく
粘度を増して
重く絡みつきはじめた
暗闇の
後ろ姿しか
見えない
姿の無 ....
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