白く寂し気な船が今にも沈みそうだ
港の灯りも霧雨に曇っている
故郷の海で荒波を受け傷ついた船底は
修理は不可能の様だ この港に船を沈める
この白い船は ものを言わぬ私
あ ....
まつ毛の長い君の
潤んだ瞳の先に小指をあてて
銀盤の満月に照らされたのは
何時の事だっただろう
しなやかなブロンドの髪に指を絡ませ
水晶のような
口づけを交わした
あの夜
夢の欠片 ....
希薄な空気を
息する身体
濃密なヒミツの
波打つ脳内
実体らしきは
目に見えず
遠い金属質の
音の交錯
失われる
自我より帰すもの
到達のない
生死の遍歴 ....
アゲハ蝶が嵐の島で名も知らぬエキゾチックな花弁の陰で眠っていた
ざぶりん ぴたぴた ざぶりん どっしゃり ひたひた しとしとり
折れた羽伸ばし 舞い飛び落ちた 密林のただ中
天敵の ....
孤独はいまも継続中だ
それが常態となってしまえば
たいした痛みも感じないものだ
ときおり非日常にきみがやってくる
それは僅かな恩寵でもあり
かすかな煩悶でもある
きみは花をアレンジ ....
握った手を離したくはありません。
父が寂しくないようにと
両手いっぱいの白菊を
棺の中に入れました。
(お父さんさようなら。)
その一言が言えなくて
私はもう一度
両手いっぱいの白菊を
....
しゃこっ。しゃこっ。と響くスポンジの音。
100数えてから出るんだよ。と
身体を洗いながら父が話しかけた。
「1・2・3・4・5!!」
熱を帯びて赤く染まる肌が
少しずつ汗を滴らせる。
....
都心へと続く田んぼの中の線路。
田植えを終えて一息つきながら
父がおにぎりを頬張った。
梅・おかか・こんぶ。
母が麦茶と重箱を差し出しながら
にっこりと笑っている。
汗を拭いて ....
温めないでください
ぼろが出てしまうんです
ぼろぼろになってしまうんです
不必要に熱くなって
不必要に口の中でちくちくと刺しまくるんです
冷たいままにしておいてください
それが
決し ....
怠惰な微熱が止まらない
睡魔に憑りつかれた
偏西風が吹きすさぶ春の午后
散った櫻は欠片も見当たらず
鼻をつんざく若い緑が
想いを馳せる
コップに入った残りの水を
もうこれしかない…と、思うのか?
まだこんなにある…と、思うのか?
私の受け取りようである。
底深い・・・・・井戸にも似て
汲み尽くせぬ
あたりまえの日々 ....
知っていた?
君が一冊の本の
密かな主人公であることを。
――ほら、百年後の美術館に
飾られた、額縁の中から
赤いシャツを着た女の人は
椅子に腰かけ
頁を捲る、音が聴 ....
さぁ、足許の川面に揺れる
一艘の舟に乗ろう。
(自らの重みをぐぃ…と下ろして)
誰かが置いていったまま
傾いた左右の艪を、握り
今、漕ぎ出そう。
――旅の始めは、後回しにならぬよう ....
あめの山にはいって木をきる人がいる
チェンソーをひびかせて
切る理由がある木なのだろうが
私にはわからない
他とどう違うのか
倒されてゆく木も
生かされている木も
ただ黙って空をみて ....
私は死に向かって
一直線に走っている
後悔などは何処にもない
せめて安楽な死を願うのだが
死という狭い門をくぐるのは至難の技かも知れない
痛みに弱いぼくは
レモンに告た
モルヒネ漬け ....
感じるままに生きてやる
言葉も追いつかない
あとあと
説明だらけの人生を
感じるままに生きてやる
説明しなきゃ分かってもらえないような生き方がいい
おれの人生お ....
圧力鍋の中で椅子取りゲームが行われていた。
「誰もその椅子に座りたいのだ」と言い出したのは
課長補佐だった。
「トレンドとブレンド間違えちゃいけないよ」と笑ったのは
有閑マダム。
三ツ星だか ....
まともじゃない自分の
まともじゃない考えを
真理のように語られたって
誰がそんなもん
まともに聞くか!
まともな人を想定して
仮に自分がまともな人だったら
どのように考えるか
それ以外 ....
黒い大蛇が棲むという石橋を渡れば
桜咲く岸辺に
そこには大衆食堂が在った
憶えているお品書は
カツ丼
カレーライス
精進揚げ定食に
銀だらの照焼くらいのものだ
砂利道を挟んで
タ ....
喪服姿でアイスの実を食べたせいだ
ぱっかりわれた西瓜から 真っ赤な血が吹き出ている
ウジ虫が くねりくねりと 刺さり這い回り
蠅が ぶーん ぶんぶんと 飛び遊び
やがて土の中に 吸い込まれていく
苦しくて 苦く ....
雄と雌は縁によって出会い
染色体を与えあい
永遠の生命に祈りを捧げ
髑髏本尊まで作り上げてしまった
隠微な美しさに捕らわれ
源流を遡れば
月の光に浮かぶカーマスートラが観えてきた
た ....
燃えている
あれは、
もしかするとマグネシウムホイールかもしれないね
二本の轍からオレンジ色の閃光が突っ切ってくる
反照で人々の表情はエジプト壁画のように、平面化したが ....
もう僕はくよくよするのをやめることにした
だって空には太陽がある
僕には信仰がある
希望があるじゃないか
多少のことがあったって哀しむな
あの絶望を乗り越えて来たじゃないか
絶望こそが希望 ....
定期便さえない南の離島で
ひっそり平和に暮らす家族も
獣道のような細い山道の奥に
密かに暮らす人々も
二十一世紀は容赦なく襲いかかり
その存在を世界に知らせてしまう
ここに珍しい十八 ....
目覚めた太陽のなすがまま
空に碧が滲めば
白く佇む月の裾
星々の瞬きは囁く
青い空の底
ここにいるよと震えてる
夜の帳の幕間にて
隣り合う僕らの遠さを知らず
彼方を見ては羨む
....
イヤな奴
私はイヤな奴だから
心と反対の言葉が
口から飛び出す
もうしらない!
会いたくない!
私はイヤな奴だから
心と反対の想いが
頭の中を駆け巡る
意地悪しちゃえ ....
手が届かないと分かっているものには
本気になったりなんかしない。
同じ土俵に立ったりしない。
立とうとも思わない。
意地をはったり
悪態をついてしまうのは
さっきまでこの手 ....
隣の塀とうちの家のスキマに
新緑を伸ばしてくる
まだ若い紅葉
窓から枝の先が見えるようになった
そこ、狭いだろう?
って聞いたら
あなたを見ていたいのです
と、軽やかに揺れた
....
工場の機械音が
漏れ出す倉庫裏で
地面を見ながらタバコを吸った
同じように目を伏せた人は
フランチェスコに似ていた
休憩が終わる前に鳴った電話は母からだった
「アンタ毎日何 ....
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