君が愛していたものをすべて
壊してみてそうしたら
君は君でなくなってしまうのかって
そんなことをアボカドを凍らせながら
思ったりして
蝉の声がする
誰の所為でもない
僕は一人で
影 ....
蝸牛
ひとつふたつと
数えつつ
昨日の
夢へ降り来る光
九品寺より材木座に向かい
ほどなく波が見えて
もう秋のにおい
天道虫
ふたつみっつと
数えつつ
明日の
夢へと還 ....
なごり蝉が泣いている
生を燃焼しDNAを残し塵に帰る
雨風にさらされ
骸は蟻や微生物の餌になり
地球を構成する大地となる
なごり蝉よ
おまえに後悔はあるか
やり残した無念さはある ....
黒い廊下の奥の微笑
あなたの薔薇色の唇が
死者と雪の帯が
蒼白い樹氷を照らしていた
冬の街
鶫が羽ばたいていた
そして破壊された地に吹雪はきた
それから物言わぬ書物、先の空き地、ハン ....
前の住人が忘れてった風鈴。
干し竿で晩夏が首を吊ってるよ。
利用者がうんちを漏らした
トイレに誘導して、ズボンをおろすと
お尻にもデイパンツにもみっちりうんちが付着している
デイパンツを千切って丸めてゴミ袋へ
ズボンを脱がせて新しい着替えを履かせる ....
あなたは去った 私のもとを
私はそれを 喜ばなくてはいけない
喜びたい
あなたが今 幸せに暮らしていたら とても嬉しい
あなたが今 泣いていたら やっぱり悲しい
あなたは去った 私のもと ....
雨の夜はプディング
香辛料と優しいミルク
開いたばかりの花
熟した果実の香り
オーブンに入れて
待っている間に
手紙の返事を書く
私の心は言葉に刺され
赤くやわらかく
プ ....
バターの焦げた匂い
ビスケット
クッキー割ってごらん
あまい星
花のエプロン ランララン
妖精の足跡 森の笑窪
急がないで飛ばないで
スキップ踏んで手をつなぐ
生ク ....
うれしくてうれしくて
とてもさみしげな青空を背景に
ひとりバカみたいに
笑ってる
とおい記憶をたよりに
あの海へ行けるのか
子どものころなんども行った
あの夢の中
のろいなど
....
茂みから覗く瞳に偽りはないけれど、誰がそれを信じるだろう。
瞳から涙がとめどなく流れてゆく。
何もかも失った訳ではないけれど、愛するといったところの愛とは一体何なのだろう。
信じるも ....
真っ白い壁に毛細血管のような亀裂が植物の成長を早回しで映すフィルムを思わせる速度で広がっていく、それを夢と呼ぶことはもうやめた、どんな名前をつけたって、それが俺の眼前で起こっていることには間違いが ....
iPhoneの待ち受けを水族館で撮ったくらげにしています、ひと夏。毎日まいにち暑いけれど見るたびに気分だけは涼やかです。できればタピオカミルクティーなんか飲んで彼氏とデートがしたかった。けど年齢的にキ ....
満月の夜に妖精を見た
風の精と踊る葉は光り
粉雪のように揺れ
私に降りそそぎ
こっちの国へおいでと言った
明日になればきっと忘れる
今夜だけ私は妖精になる
白い光りに溶け ....
扇風機がまわる まわる
風車のように まわる
地球のように 天体のように
くるくると まわる まわる
風をおこし 夢見るように
まわる まわる
まわり 立つ
止まれば たおれる
May ....
猫は猫背のくせに凛としている。
昨日の恋を悔いたりせずに。
ただ足を動かしてさえいれば
前へ進めると思っていたんだ単純に
格好悪くていい
ゆっくりでもいいから
ここから抜け出したかったんだ
右足の次は左足
順番に足を前に出すだけ
転ばないよう ....
毎日嫌韓ヘイト報道けっこう
ほっときましょ、それが彼らのしたいことなんだからさ
毎週市民エネミー選定リンチけっこう
ほっときましょ、それが彼らのしたいことなんだからさ
そんなことが、 ....
いつものようにとなりに座る
夕焼けのなかさよならをした
時はゆっくりふたりを変える
すべてのような恋をしていた
おにヤンマを捕まえて
その片方の足に糸をくくりつけて
飛ばした
それは
ほんの遊び心だった
子供の頃の
無邪気だったから
その残酷さに
何も気づかなかった
そうこうしてい ....
冬の弾き方を、だれか教えてほしい。
夏の奏で方を、だれか教えてほしい。
青空にたなびく白い五線譜は
燃え盛る黒い夜を呼ぶ
重爆撃機が描く交響曲
ぐずつく雲のはこぶ雨の匂い ....
パリの妖精
第8話「マドレーヌ寺院の妖精」
マグダラのマリアの手に
丸くなって眠る妖精
窓もない巨大な空間
天井からランプが吊るされ
祈りの言葉がただよう
今日の ....
足音を拾い集めて
紫の花にして吊るす
雨の歩く枝は細く
浴衣の髪に一輪
待ちぼうけの黄昏
デュランタの実は
夕日の色を塗られ
蟻が妖精に熟す日を聞く
後ろから影がすっと
私を ....
廃墟化した団地に蝉しぐれが木霊し
紫外線にへこたれない夏草が生い茂る空き地
眼をやれば月見草が微笑んでいる
幸せも 不幸せも 絶望も 希望も
混濁し合いながら曖昧な執着へと向か ....
今を、静けさが支配している
静けさは私という不安を抱き留めている
私は静けさのなかで震えている
静けさのなかですべては始まるから
静けさがすべてを支配するから
私は吐きそうになりなが ....
ストローをしつこく噛んだ。
絶対に許さん、と言わんばかりに。
雲を詰めて創る
うさぎのぬいぐるみ
長い耳に付けた
虹のリボンは蝶結び
余った虹のリボンを結ぶ
空色の長い髪に
あの人が好きだと言った
虹のフレンチボウ
入院中のあの子 ....
ときに 言葉は
無力な吐息
ときに 言葉は
無神経な凶器
ときに 言葉は
こころ温める 熱
ときに 言葉は
魂を舞い上げる 風
こみ上げる
言葉たちの渦
極まれば ....
驟雨が街を過ぎ
それから爽やかな風
陽の光が差し
窓の外から深く青い空
この大地で
たくさんの戦いがあって
たくさんの人が消えた
ああ 思い出したくても
決して思い出せない
....
玄関は男女の冬物のコートでいっぱいだった
ぼくは小間使いにコートを渡すとネクタイの結び目を直した
客間からはテンポの速いピアノ独奏音が響いている
爪先立ちで足音を忍ばせながらぼくはドアを開けた
....
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