何となく生きている
僕のいる今はそんな朝
食べ飽きたトーストや
冷めたコーヒーが
さよならの条件に当てはまる
燃えるゴミの日
本当に捨てられるのは
僕だったんじゃないか
生きる意味とか ....
暮らしの貧しさは容易に数字に出来るけど
人の心の貧しさは容易に言葉や文字には括れない
日々の仕事に心底疲れながら
休日にそれを癒せない
そこには命の貧しさが潜んでいるからだろう
平凡 ....
何も決めずに
何の情報も頭に入れず
君と気ままなドライブ
初めて通る道はワクワクする
この先に何があるのか想像して
あまり有名ではない場所
有名な場所へ行くより
新しい何かに出逢 ....
今までとこれからのあいだ、
クリスマスと大晦日のあいだ、
仕事収めと収まらないのあいだ、
夜と朝のあいだ、
頭の先とつま先のあいだ、
始まりとお終いのあいだ、
指先 ....
素焼きピスタチオを食べて
ビールを飲んだ夏
なにもなかったんだって
知ってるから
ビー玉の星を探す
ルービックキューブなのか
キューリックループなのか
わからないほど
運命 ....
原爆で死ぬのと
糖尿病からの
合併症で死ぬのと
死には違いがなく
どちらも等価である
ことを考えると
私は敢えて8/6を
全国糖尿病死者慰霊の日にして
広島の原爆公園で慰霊式を行った
....
モノノケ準え、型紙だけが戯けている
薄情な者ですが姿だけを残していきます
そのうち、枯れるでしょうが
煌びやかなリネンの死体袋に
薄紅の陽の欠片を加護めた
面影を散らした数、樅木の鐘が鳴 ....
暗闇に蒼白い河原の
小石夥しく静まり返り
流れ動き澄む川は無音
黒く光る水面の異様
恐るべき氾濫を孕み
奥まった沈黙を保つ
決して終わらない不安は
この沈黙という深い謎に
剥き出し ....
自分で揚げた、揚げたての
一キロあたり213円のポテトフライを
食べながら、ふと思う
しあわせだなと、恵まれていると
現在、働いていない
それなのに
氷入りのコーラを
朝からがぶ飲みして ....
海の背中に鳥が落ち
八月半ばが焼け進む
青みと光と電線町よ
白光の出口のようで
ただの真昼の三丁目
蝉が鳴き止まないと
見知らぬ死の名前を
あなた ....
花は枯れてゆく
虫は絶えてゆく
人はそれを見て
強く生きてゆく
命が歯痒く
網戸を閉めても
自分の中に明日を描く
背ばかり伸びて
夢に届きそうな朝は
肩が広かったら
庭を作りたい
....
さいあくのあくとく
それを
ことほげ
すましたかおで
へいぜんと
ちでよごれたてを
さしだすのだ
くもつのように
みをよこたえよ
おそろしい
りゅうや
ばんけんのきばに
い ....
夏夜にヒューズが飛んで、飛んだヒューズを両手で優しく捕まえた。
そいつの正体は何と小さな蛍で、僕はその小さな光で一夜を過ごした。
何かおかしいと思うことのひとつは
庭の紫陽花のことだった
八月を迎えても その子たちは
いまだつぼみのままである
長すぎた梅雨のせいで
ウエハースはたちまち湿気り
紫陽花は許容力をはるかに ....
知らない場所で雑巾をカラカラになるまで絞っていたら、死んだ父親が生き返っていてもう一度同じ病気になっていた。ぼくは中学生で学校に行けていた。好きだった同級生は大人の女になっていて、知らない ....
肩幅で生きる
肩に幅があって良かった
夏は草の履歴と
雲の墓場
ただいま
おかえりなさい
言葉が影になる
初めてできた影だ
子供たちに見せてあげよう
昨日いた犬にも見 ....
親父が脳溢血で倒れた日
電話が掛かってきた
親父本人から
「ひろし、今すぐ俺に会いに来い!」
それは命令口調だった
「どうしたんだよ父ちゃん?何かあったのか?」
すると父ちゃんは言った ....
人の影が斜めなら
その人自体も斜めなんだよ
と
若い頃
人に教えられた
未熟だった私は
未熟なままに
その言葉を聞き流してしまった
歳月は無情に経って
終焉が近づいていた
....
うちの取引先の
小さな町工場の社長さんは
うちの職人さんと古い友人で
入院先のベッドの上で
手書きの伝票を書いてくれる
おそらくはただ
その職人さんのためだけに
自分が書いているのだろう ....
去年の夏
海沿いの古い集落の
小さな宿に泊まった
窓から見えた自販機だけが
灯りらしい灯りで
ジュースを買いに出たとき
本当の夜を知った
すぐ近くなのに
宿の灯りが届かない
夜がこん ....
雨の日はいつも
どこかで
誰かが
泣いてる気がした
雨に濡れて
傘が無くて
ひとりぼっち
でも
泣いてるのは私だ
この星の何人かは
ちいさめの正方形の紙を見かけると
戦争が終わった後だというのに
戦争のせいで病み 快癒を折り紙に託しながら
亡くなった少女のことを思い出す
紙の角と角を 合わせて
鶴 ....
熱波の到来、渦巻く大気
気の遠くなるような青い空
蝉時雨の下、俺は進む
光の踊る、時の未知へ
夏へ叫んで、夏へ叫んで
遠い木霊を聴きながら
獲物を狙う豹のように
ギリギリで生き延びる自分で居続けたい
積み荷を待ち構える
フォークリフトのように
ボー ....
光に貫かれ
すべてが踊り出す
この八月、
白い波しぶきを浴びながら
旅人は麗らかな海辺の街をいく
静かに客人を待つ庭先には
石と薔薇、薔薇と石
石に刻み込まれた眼は
鬱屈を宿しなが ....
幼い頃から不思議でない
ものには
興味がなかった
そのものが不思議を
孕んでいるときには
ときめいたものだ
大洋や星
深海生物や
ジュラ紀の森
型紙のないものが
不思議 ....
コロナ感染者が
人口の99%を越えたとき
巷では
こんな会話が囁かれるに違いない
「ねえねえ、あの人
まだコロナになってないんですって」
「えーっ!嘘でしょう?
今どきそんな人いるの ....
目を閉じて眠りなさい
死なないように
願いを掛ける時は
まつ毛の一本ずつを
短冊にしてみよう
流されて天に届く気がする
美しい寝顔のままなら
毒を飲むこともない世界で
明日が来るのを前 ....
自分というだめなものを持ち上げて
よいしょっと背負えるようになりたい
それができず
自分を引きずっている毎日
自分にがっかりし
がっかりしたくないがため
投げやりになる
日々
....
きちんと洗い物をしよう
ちゃんとご飯を作って
決まった時間に食べよう
幼稚園児みたいだな
こんな当たり前のことすら
出来ていない
天球と交信するとか
青色のアステカ蟻だとか
夢 ....
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