遠い昔の{ルビ故郷=ふるさと}で
おちんちん出して川を泳いだ子供の頃を
懐かしそうに語るO{ルビ爺=じい}さん
空の上からそっと見守る
若き日に天に召されたO爺さんの奥さん
....
踏切の向こう側に立つ
少女の横顔に
六十年前の悲しみが取り憑いた瞬間
僕は
塵芥を掻き分け続けた両手と
石ころを蹴飛ばし続けた両足に
ほんの一刹那
接吻と落涙を捧げることができた気がした ....
四時三十六分
始発
どいつもこいつも
終着にむかっていきやがる
終着は、またどこかへの始発で
始発は、いつしか誰かの終着で
だれもかれも
途中で降りるのだろう
{ルビ可変電圧 ....
知らない間に 夏が過ぎて ゆっくりと秋が訪れようとしている。
真夜中の静けさ 心細さ。あなたが支えてくれますか?
あなたと一緒なら 安心しても良いですか?
弱い人間とは思われたくなく ....
僕が銃を手にしているのは、強さが欲しいんじゃなくて。
惚れたから。
強さは、口でも拳でも。
何でも代りは在る。
傷付ける為に撃つんじゃなくて。
叫ぶ代りに撃つんじゃなくて。
....
理由をお尋ねしても構いませんか
無用な物事に慣れてしまえば
あなたの哀しみと同等に
わたしも哀しいのです
涙の理由を
お尋ねしても構いませんか
夕闇のなかを
誰も彼もが急ぎ足 ....
真理に辿り着くには
真直ぐ進んで
横に曲がって
上ったり下がったり
時には間違えて
そこで道を確認して
大切なのは
一度には一つのことしか
できないこと
真直ぐ進みながら
....
突然の{ルビ雷=いかずち}に目を覚ましたわ
隣りにいるはずのあなたがいない
どうなってるのよ
違う女と枕を並べて眠っているのね?
そうよ
あなたはいつだって
私の涙を ....
むすびめに つまずいて ころんだ
ものずきに おなじみちをきた
きみも つまずいて ころんだ
そこで ふたりは むすばれて
あたらしい むすびめになった
お婆ちゃんの細い手が
絵葉書に描いた
美味しそうなまあるいピーマン
筆を墨に浸した僕の若い手は
「 いつも ほんわか しています 」
と曲がりくねった字を余白に書いた
お婆ち ....
ひかりの意志は、古い細密画の粗野を洗い、
陰影の微動を深めて、写実を濃厚にめぐらせる。
信仰の果てしない夢を、
高貴な光彩の眩しさのうえに、
振るい落として――。
古典はイスパニアの春を謳う ....
蒸気機関車は白い煙を吐き
山間に入つて行つた
当初は白煙もにじみ
汽笛も木霊して
ああ あの辺りを喘いで行くな
と安心させたが
程なく それもなりを潜めて
山は静まり返り
もう蒸気 ....
雨が降っていたので
花を買わずに
帰ってきました
色が鮮やかだったことだけ
覚えています
雨が降っていたので
コンビニのお弁当を
食べました
ラップを取るときだけ
なぜかわくわく ....
ブループードルを飼うことにした
青い物しか食べない
難儀だ
試しに、青い折り紙を置いてみたら
見向きもされなかった
旅に出た
ブループードルを連れて
青いものを探す旅
....
差別されるのは誰だって好まない
優劣をつけて評価されて判で押される
優越感や劣等感を生み出すことに
何の意味があるのだろう
子供の頃から成績や性格や態度で
差別 ....
深い悲しみの色だわ
胸に漂う紺碧の思い出たち
今でも夢に見ているの
あなたと出会った嵐の夜を
もう一度愛がよみがえるなら
私のすべてを捧げてもいいわ
あなたの腕の中で生きられたら
何もい ....
その指一本
指の一節さえも愛おしい
かわいい言葉
ちいちゃなお口の赤さ
さくらんぼにも
イチゴにも負けない
甘さ
へしゃげたお鼻
誰に似たのと大人たち
お構いなしに宝物
....
勇気は境界線の狭間で
いつだって萎れていくだけで
零れ落ちてしまいそうな気持ちに
ぴったりと蓋をして
伝えなかった一言
感情の起伏のような山並みを
ゆっくりと雲が隠していく
嘘つきな ....
じいちゃん ねだっしょ
ばあちゃん ねだっしょ
とうちゃんも かあちゃんも
はぁ ねでしまったども
りりりりり
りりりりり
まどのそとさ きごえる
んだ ....
ええ、なんだってえんだい。
何をそんなにしょぼくれちゃって
ええ、なんだってえんだい。
ええ、何をしていいか分かんないって
なんだいそりゃ。
俺だって自分が何していいか分かってないよ。
....
薬の臭気が私の鼻をつまむ
私は奇怪な妄想に胸ふくらます
青空! 空はあおい
そのもとに灰色の飛行船が飛び交う
私の脳味噌の断片
爆発した心臓の破片
鮮やかな紅の紙吹雪が
....
晴れたときに見えるのは
どんなばしょ?
くもりでも
あめでも
きっと
みえるだろう
霞がはれたら
きっと
わかるだろう
そこには
ただの ....
何を見たらいいのか
何が真実なのか
わかるはずないし
答えなんかないし
燈が灯っていく
ポツリポツリ
ふわふわ
漂って
暖かさを生んで
抱きしめたとたんに消えていく
何 ....
猫はどうしているだろうか。
ある晩
ぼうっと星から眺めていると
パラシュートで降っていく猫を見た。
大気の摩擦熱で真っ赤に燃え上がり
シッポをブアっとふくらませて
期待 ....
爛々と輝く
糞達のtranslation
理解を超越しているのか
稚拙なのか
あぁ……
殺したい
その覚悟がある
実行しないだけ
ぶら下がる過去の夢から
憂鬱 ....
笑ってくれ
月がとても
浮かんでいるから
こんなにも静かな
何も無い夜に
道を歩いてるんだ
子供の頃
友達の家で見た
アポロの映像
いつかと
夢見た
あの頃はただ
夢を見れ ....
今日は仕事ないから
俺たち遅くまで寝てたっていい
でも空がほら
あんまり青いから
外に出ようぜ
競争だぜ
階段駆け下りて
飼い犬に ....
あの年、
台風16号だか17号だかがこの町にも近づいた9月
たしか火星に運河をつくる計画が発表された年なので
よく覚えている
ぼくはまだ
ランドセルをしょって
短パンなん ....
ねんねねんねんお休みなされ
{ルビ吾=あれ}がひふみと数える内に
つると意識を落としんさい
夜毎虫飼うこの腹は / 骨は浮き出て皮ばかり
ゆるく静かに撫ぜてやろ / 肋が指先引っ掛かる
....
ただ 届けたかったものが届かない
けれど 届けたことだけ 思い出して
いつか私は 暖かいものがあったと
眼しかつむるものがないこと
瞑る眼が それでもあることに
感謝して
数は ど ....
5052 5053 5054 5055 5056 5057 5058 5059 5060 5061 5062 5063 5064 5065 5066 5067 5068 5069 5070 5071 5072 5073 5074 5075 5076 5077 5078 5079 5080 5081 5082 5083 5084 5085 5086 5087 5088 5089 5090 5091 5092
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