小さな魂
と云ふと
魂に大小があるかのやうだが
猫
親しい筈の隣人
である彼ら、を
英語圏では
Nine livesと呼ぶ事は
周知
9回の生涯を終へた老猫は
もはや小さな
魂、 ....
彼女に會つてきました
(絶句… この儘では絶唱になつてしまふ
絶唱は奥の手です)
彼女はグループホームの話ばかりしてゐます
どつちみちゆくゆくは
僕と四畳半一間の愛の巣を持つのにも関はら ....
たった1日で良いのです
この先、お互いが生きてゆくために
燦然と輝く思い出が
どうしても必要なのです
それさえ許されませんか?
平日十時頃の大通り商店街は人通りもまばらで
柔らかに陽に温められた風が頬を撫でる
どこからか蕎麦つゆの香りが鼻を掠めた
自転車を漕ぎながら私はその余韻を楽しみ
踏切信号が青で遮断棒がまだ下がら ....
染み入ってゆく、雨
恥ずかしい入れ物
としての私
穴ボコのよな
染みを作っていく
待ち人の
声を嗅ぎつける
首輪は無いのに
ちょっとぎこちない
季節が
ちょっとだけ錆びつい ....
平凡に生きていると暇なシロガネーゼのマダムも外国語を習得したり多忙極める研究者はますます専門分野に分け入ってしまう。詩をメタで極める方々は見ていると逆転する。忙しいときこそ全領域を深めている。
....
○「神論争」
神は人間が創ったものである
人間は神が創ったものである
○「不幸の種類」
不幸にはピンからキリまである
戦争や飢餓に苦しむ不幸があれば
便秘に苦しむ不幸もある
当事者に ....
暗闇の中、心を塞ぎ、助けを求めていたおにいちゃん
欲に溺れ恋に迷い、それでも我慢し、じっと耐え堪えていたおにいちゃん
愛を求め、憎しみを深め、僕を自らの吐口として選んだおにいちゃん
夢を見て、気 ....
幼さ故の恋心が
初恋が
正解のときもある
どれほど絶望しても
どれほど泣き叫んでも
あの神の如き瞬間を思い出せば
あなたも真実、私を愛してくれていると
絶対的確信をもって言いきれる
....
ブロッコリー、ブロッコリー、ブロッコリー、です父上。
それはブロッコリー、あれはカリフラワー、これはキャベツ、あれは菜の花。
ブロッコリーはね、花のところを食べるの。
白いのがカリフラワー、緑い ....
薔薇の花束を届けようとしたU子さんが、
通りの曲がり角のところでふとかけ足になる。
こそばゆく、茎と葉と棘と包装紙は揺れて。
今日は雪が降った初めての日、
それからずいぶんと経って、また雪が降 ....
あなたはただ、わたしではなく親御さんを選んだだけ……
と、あなたがとうに大事ではなくなってしまった今に思う。
あまりにも若すぎたから真剣だったんじゃない? たぶん。
もうあなたの面影すら覚えてい ....
何でも無い感覚と
そして時間
何もしなくても見える
街は動く映画のようだ
歩いた 外を 昼は
鳥と そして おばさん
今日も 僕は 川で
水面の うねりと 光を
その人のことは
もう誰も憶えていないはず
ただ
命を覗いただけなのだから
仲の良かったのは昔
忘れて行くのが
当たり前
もう未練は無いのだし
互いの心
見える振りしただけのこと
....
耳に脈動の唸り絶えず切迫し波打ち
心音血流絶えず響く 変わらぬ苦悶の夜に
東の空からオリオンの昇り三つ星輝き 、
私の現の幻聴の下 遠く近く宇宙の現
我の内底から絶えず突き上げ
....
愛と{ルビ細=ささ}やかな経済力があれば
やって行けると思っていた
疲れたぼくは入院することになり
毎日を{ルビ繭=まゆ}の中に包まれ
平穏な時を過ごしている
知り合いもたくさん出来て寂 ....
谷間に
爆撃のように空が落ちてきた
カラン、と音がして
貧しい僕らは 拾いたくて
枯葉のまえでうずくまった
私は私
蛇は蛇
どちらも支配してはいけない
欲望の首輪をつけて引いていくような
関係性は破滅を招く凶
それぞれの厄災はいくらでもあり
各々の環境を整えるのが吉
生態系のバ ....
寄せる波 返す波 、
到来したこの朝に
陽の光の闇を照らし出し
漆黒の真っ青に染め抜かれ
光を透かし彫りにし
浮き上がり
返す波 寄せる波 、
突き上げ突き入る
うねり唸り ....
ハム食む
はむはむ
朝から一生懸命
目の中に輝く未来
ハムはむはむ食むと
オレンジジュース
牛乳は冷蔵庫
珈琲の匂い
もうすぐ行ってきますだね
今 ....
何かを考へなくちやならない時
僕はロールパンを一箇食べる
その養分の余剰が
考へとなる
(結果として太るのだが)
思念などゝ云ふものは
摂取カロリーで幾らでも左右出來る
摂り過ぎればぢゆ ....
もうこれつきりと云ふ杭を打ち立てる為に
この筆執りました
きみはノーと云つてもよかつた
俺がきみの魂を求めた時に
ノーと云つてもよかつたのです
俺がそれ以上を望んだ時に
だがきみの愛に ....
夜を背景にゆびをひろげ、細かな雪の砂に触れると凍る
目をながれるたびながれぼしを疑う
天はぜんぶ見ている
(そんなの嘘
生きるということについて考えるのは無粋
アスファルトがアルトになる冬、 ....
関東平野には一月現在
何か欠けてゐるものがある
僕は髙校入試の合格發表の日
初春だと云ふのに
いや春だからこそのどか雪に
足を取られた事を思ひ出す
さう、雪
雪がまだなのだ
その日僕は ....
雪は あざむく
この夜の うすいけがれを
白は 掻き消す
生きること 死ぬこと
その汚さを
どうしようもない 小さな孤独が
しとしと しとしと 降り積もる
この白い手の 僅かな熱すら ....
この星の芝生のうえで何者でもなくなってみよう
くさくさとした大地のうえで名もなき草は あらず
かといって宇宙は広すぎて
わたしはついにスプーンがもてなくなった
みなキャッチボールをする為だ ....
○「終活期生き方骨太方針」
脱成長
脱反省
脱協調
○「笑う動物」
人間は
笑う動物だ
笑うのは人間だけだろうか
猫は?犬は?笑うのだろうか?
馬は笑いそうだが
豚は笑いそうに ....
庭先には
風で出来た駅があった
物も事も停車しない
すべてが通過してしまう
寂れた駅だった
夜が明ける頃
母は庭に洗濯物を干し始める
それから弁当をつくり
朝食の準備をすると
....
悪夢を見る男がいて、そんなの勝手でしょとなる
悪夢を見るのは人の勝手だから、そんなの勝手でしょとなる
本当に、そうだろうか?
本当に悪夢を見るのは、その男の勝手だろうか?
男の名前は浅井龍 ....
坂の最後に名が落ちていたら
さかなにあげてください
と坂が頭をあげて願いでた
ひとに頼むなら頭を下げろ
と坂をふんであがっていくと
坂が途中から逆立ちをして
先に下げておくべきでした
と ....
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