片隅に
猫の
死体
ぼくの
腸を
固く
重い
瞳が
掴む
完全な
体
凍った
時
....
昔、砂場でよくあった
棒切れを手に取って
自分と、自分以外の人間のあいだに
いびつな線を引く
こっから先おれの陣地だかんなー、
そう言って嬉しそうに、
そして、意地悪そうに笑う
それ ....
島のことを思いながら
島を眺めている
島にはいない
鳥は風穴も開けず飛んでいく
船尻は尾ひれをつけてゆく
吃逆の止まらぬ胸辺り
持ち上がっては黙る気の迷い ....
その名前で呼ばれるたびに
本当の名前が海の底に沈んでゆく
こうしている間にも
想い出はつくられているというのに
似たような体温で君は僕の名前を呼ぶけれど
君は僕の本当の名前を知らないし
僕 ....
朝は輝きの中にある。
射るように、この体を突き抜ける光が
朝のすべてだ。
闇が絶え
やがて訪れたキラメキの洪水は
闇の中の深海に果てなく沈んだ思いを
光の中に解き放つ
闇に遊んだ ....
野菜が野菜の味がしないし
なによりも
僕が僕の味がしないから
ごはんは船に乗った
旅に出るつもりではなく
綺麗な女の人に会うために
船は川でも海でもない
水があるところならどこ ....
見た記憶と
見たかもしれない記憶を
理解しあおうなんて思わないほど
ふたりで見つめ続けてしまう
ひとつの景色
もっと柄になる
ぶったなおれた後に 服を着ている
今が夜だとか
秋の夕焼けだとか
雨が降ってしまえば
気にならなくてすむのか
案外近くにあった嘘とか
予想通り遠くにあった心だとかも
雨が降ってしまえば
気にならなくなるんだろうか
....
太陽とは何だ
太陽のうんちをたべたい
心とは何だ
心から真っ直ぐに思う
愛闇とはなんだ
真っ直ぐなバナナあ、食べたい
今夜 泳いでいるの子よ
真っ暗が暗くなっても 人が愛して ....
引っ越した家への帰り道には
お寺の門前と墓地を抜ける箇所があって
そこから先は急に夜が深くなる
歩いていると聞こえるのは
虫の声と自らの足音だけで
夜に包まれる心地好さを感じながら家路を ....
いわれのない不安
水溜まりに滴が落ちるみたいに
広がってく
静かに
約束されていない将来に
気持ちはどうせ頼りない
音のない部屋 ....
久しぶりに泣いた夜
涙のキレイな人ではないけれど
つかえて 込み上げた声に
本当の気持ちがまっすぐに流れた
剥き出しにした感情と
不意に笑いあえた記 ....
雨が降ってきた
ていねいに すこうしずつ…
部屋の中にいると
外の寒さが まるで
「ひとごと」のようになっちゃうからね
わすれないよう
....
くまをね
くまをおんぶして歩くの
会社行くときも
映画観に行くときも
フランス料理食べに行くときも
くまが可哀想なんじゃないんだ
私がくまがいなきゃもう歩けないんだ
ねえ く ....
彼はいつも、四つ足を
ぴたりと大地につけている。
一体何が本当に
天から彼に
与えられたものなのか
ぢっと開いた丸い目で
夜の{ルビ静寂=しじま}を見抜く
蛙のよう ....
080910
夾竹桃に絆されて
ここまで来たのです
行きたい場所に
連れて行ってやると
いわれ続けて50年
もうこれ以上登れない
階段の先を眺め ....
ありきたりかも知れないけれど
願いを載せた歌詞を作る
辛うじてそれを唄にした声は
冷えた空気を吸い込んで、震えていた
ふわり、最後まで寂しがりやの黒猫を抱き締めた
とくり、と鼓動はきっと ....
触れた硝子窓は絶対零度
その瞬間から解けていく
元素の化学反応の連鎖
壊れて繋がる、この永遠ループ
フラスコの水面に、泡立つ蒸気
弾けて溶ける 溶けて弾ける
汚れた白衣に薄い日 ....
真っ白な満月が支配する夜
皇子の脳に細工をして
記憶を書き換えた
叶う筈のない思いは
かくして報われる事となった
嗚呼、罪でしょうか、
踊る踊る太陽の光の環
歓喜に震える鳥たちの囀り ....
重苦しい空気、が
ベッドからはじけて
おじいちゃんの全身、に、
ふりそそぎます
点滴、天敵、
内出血で、腕が、
ぜんぶまっかっかが
ぎゅるりと
ぼくのあたまをまわって
いとおし ....
星が見えない
猫が通り過ぎない
草木が繁らない
子どもが声を出さない
眠らない鉛筆
眠りたがる目薬
窮屈な列車と飛行機は加速する当てがない
止まった世界へようこそ ....
夏の終りは
ある時
死を意味する
ふと やんだ蝉の声
鳴かなくなって
地に落ちる時
景色が 突然
逆さまになった
陽の光が眩し過ぎて
あっという間の
地上のいのち
季節の移ろい ....
この街は夜が早いので八時九時にはもう店は閉まりきる
昼のにぎやかな通りは明るい街灯を残し
ひっそり寝静まってしまうのだった
カップルの散策も終わり、客足もドンチャン騒ぎもなく
波の ....
ブリキのバケツに
小石が落ちた音がした
ずいぶん長い間
水を入れていなかったな
そう思い出したけれど
バケツに水を入れてやるのが
考えるだけでも億劫だったから
背中を向けたまんま黙っ ....
ターンテーブル
080910
ゆるやかに日が暮れ
跳びハゼが眠る頃に
三日月色の雲が出る
古着を売って流離う風も
そろそろ退屈するはずと
....
只、彼が良かったのは、丁重過ぎたやり方でなく、まるで記帳するよういつも忍ばせていた必然性だった
それまで経験してきた四、五人との交際の中で、しだいに漠然と、私は遅鈍な女だと、思うようになっていった ....
重たいよ、重たいよ、と稲が鳴ります
生まれるよ、生まれるよ、と栗がもうすぐ妊娠八ヶ月です
うーーん、と心地よい秋風に、晴天が背伸びをします
ぐう、ぐう、と魚の雲を見たわた ....
祭りの夜は渦巻く貝殻
空はずっと青かった
水の流れをずっと聞いていた
草を噛むとたちまち苦みが
口なかに広がって 星が銀河が
水のように押し寄せて来る
あれは
ケンタウルスのきら ....
路地裏から抜け出して
一瞬の風に乗る
鼓動が速くなるにつれて
汗が流れる
照りつける太陽も
夜道を照らす月も
打ち付ける雨も
風を感じられれば関係ない
....
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