[11]佐々宝砂[2004 12/26 01:55]
「女王(プリンセス)」より  アルフレッド・テニスン

涙は、故知らぬ空しき涙は
神々しき絶望の底より、
胸に湧き、日の中に集る、
幸福なる秋の野を見るとき
またあらぬ日を思ふとき。

海のあなたより友をつれ帰る、
その帆の上に輝く第一の光の如く鮮(あたら)しく、
我等の愛する総ての者と共に難破する、
その帆の上を赤らむ最終の光の如く悲しく、
またあらぬ日は鮮し、悲し。

ああ、おぼろなる夏の夜明方、
半ばめざめたる鳥のいと夙(はや)き囀りの、
死に行く耳に聞え、死にゆく眼(まなこ)に、
窓の戸のやうやく白むが如く
またあらぬ日は奇異なり
[次のページ]
戻る