[520]川村 透[2009 02/22 13:35]★1
速い。僕たちは自然と見晴らしのいい塔を目指している。アスファルトが風にそよぐ布のように踊る。僕は特殊な「走法」で地を這うように速度を上げることに成功する。「かつて身に着けた技」が蘇ってきたみたいだ。瞬く間に先輩のすぐ後ろにまで追いついた。
塔にたどりつく前に、まち、は溶解してゆくみたいに見える。それは「何かの法則」に従った「無秩序」なんだろうか。燃えるような津波に似た水の壁、沸騰するコンクリート、港の船が立ち上がりワルツを踊る。人ではない。よろこばしい混沌でもない。異界が笑うように口を空けて別荘を変形させてゆく。島が熊のように身を震わせている。
僕たちはメリーゴーランドにしがみつい
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