憂楽町線/練馬区民
 
夜の憂楽町線は
疲れたメガネの顔でいっぱいで
うんざりしていたら
隣に座っていた女の人が無言で泣いていた

女の人は下を向いていて
しゃにむに手で前髪をすいている
耳をすますとポツ ポツと聞こえる
周りはみんな疲れて
メガネがずれてるから
そんな女の人に気付いていない

むかしもこんな事があった
あれは夜の刻分時線で
泣いていたのは私だった
誰も気付いてないと思ってたら
隣に座っていた人が
黙ってハンカチを差し出してくれた

あのハンカチはどこへやったんだっけ
今の私には
あなたにあげるハンカチがない
東京が埋まるくらい配られている
武富士のティッシュ
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