入院願望/馬野ミキ
バイトの面接の帰り、吉祥寺で降りて、井の頭公園に寄って
ふと、入院したいと思った。
でも、実際に苦しむのは嫌だから、
病気とかじゃなくて足の怪我とかがいい。
複雑骨折か何か分からないけど、長引くかたちがいい。
あ、やっぱダメだ、それじゃあ看護婦からの同情ポイントが低い。
やっぱ適当な不治の病系か、
それも俺自らの損失によってひき起こったものじゃないやつ。
病院は大型の総合病院で、大きな庭がある。
俺の病室の窓からその庭が見えて、車椅子で散歩してる人、
面会に来た家族、看護婦に寄り添うように歩く老婆の姿や、
幻覚に悩む無名作家の姿などが見える。
俺の病気はあまり前例のない病いなので、
時々治療とは関係なく研究の為の検査が行われる。
そんな時には看護婦連が俺の周りに群がってきて、
いつも以上に優しくしてくれた、
みたいな。
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