叙景事情/よつやとうじ
塗り絵に多くの
期待をしては
いけませんよ
消えそうな手で
果てるまで
そういって命を乞うた
天花粉のけむり舞う
七百十号室は
発疹の若い火照り
八朔を剥く指も
ここでは何ひとつ
生産致しません
溶けそうな緑が
海に切れ込む空が
乾いてひび割れた
午後の素足を
酸い水に浸し
どうか身を震わす
季節の名があれば
おひとつ分けて
頂きたいのですと
張り付いた前髪
今は脆い骨の音が
唯一の答えであるように
正しいシーツの皺も
ひとつだけなのです
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