空中列車/服部 剛
 
立ち並ぶビル群の幽霊
ビル風が吹き抜けると
敷かれゆく風の線路の上
滑らかに空中列車は行き交う

乗客は皆視線を落とし
日常に見つからぬ出口を
携帯電話の画面に封じ込める

 「おはよう」

 「おやすみ」

ボタンひとつで
「向こう側の君」へ
押し届ける 小さい幸福

10年前
アルバイトから帰り家の門を開くと
来る宛てのない手紙に
首を伸ばしていた

10年後
仕事の鞄を床に落とすと
夕食を置き去りに
パソコン画面の前にくつろぐ
手にしたティーカップのコーヒーを啜(すす)り

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