空中列車/服部 剛
 
・2通 ・3通 ・・・

キーボードの上で眠たげに躍る指から
電子文字に体温と血の流れを封じ込めては
おぼろな心のどこかで
いつか 誰かに
「君に会いたい」と書いた時の
ペン先が便箋に想いを刻んだ感覚が残り
遠い場面のどこかで
自転車の配達夫が
一通の手紙をポストに「かたん」と入れる音を
今も待ち続けている

21世紀よ、
ビルの上の、そ知らぬ顔の青空よ
私達の表情が
同じ仮面ばかりを被りませんように
人間の血の通う言葉と
愛する人の抱きしめ方を
教えてください

今日もビルの谷間を滑りゆく空中列車
誰かのベルの音(ね)に
うたた寝から目覚めると
無人の座席にはいくつもの携帯電話が置かれ
全ての車窓は空色
車内には
僕一人だ




 ※ 初出:「詩学」 ’04年7月号(投稿欄) 








   グループ"四文字熟語"
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