回転寿司/天野茂典
ふと人生は回転寿司のようなものだと思った。ベルト・コンベアーに運ばれて回転するネタ。好きなもの選んで食べていいが、満腹になるには、何皿も平らげる。客が多いほどネタは新鮮だが,磯の香りの中でなにか足りないものがある。合理化だ。人件費削減の人気のない漁港の賑わいだ。機械化されたシステムの上の海老や貝ヤ、カリフルニア巻きたち。
アメリカから逆輸入されたようなトロピカルな品種が並んでいる。新しいことはいいことだ。この消費化社会で生き延びるためには競争原理が必要なのだ。他店と競う。価格を落とし、新鮮なネタで勝負する。だがどこかで歯車がギシギシいい、磨耗してゆく食材がある。捨てるところなんか
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