黄金仮面/佐々宝砂
吹き飛ばされてゆくのは、
化学物質と化合して変質した砂。
ちらほらと咲いているのは黄色い蝋梅、
しかしあれも本当はプラスチックでできている。
再び虫たちの夏がくることはあるのか。
氷河はきのうと同じように後退する。
月は先月と同じように欠けてゆく。
でも、もう夏がくることはない。
気温が上昇しても。
地球が温暖化しても。
この金泥のまひる、
きみは黄金仮面の扮装(なり)をして、
ステッキで空を打つ。
いくら打っても懐かしい春雨はもう降らないのに。
どこかで春雷が光っている。
たぶん、遠い海の方で。
けれど海なんてまだ残っているのだろうか。
大地はすっか
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