黄金探偵/佐々宝砂
たらしい。
かといって五月の明るい陽射しも差しはしない。
ぬるいお湯にひたった日も遠くなったらしい。
しかし戸外はやはり黄金の輝きに満ちているのだ。
重みさえありそうにねっとりと光り輝く、
その黄金は、
すべてを浸食してゆく。
黄金のひまわり、黄金のりんご、黄金の太陽、黄金の砂、黄金の髪、
黄金の胃カメラ、黄金のゴキブリ、黄金のシャツ、黄金のティッシュ・ペーパー、
黄金の白紙、黄金の黒檀、黄金の青魚、黄金の赤トンボ、黄金の銀雪、
黄金のアルファ、黄金のオメガ、
黄金の黄金の黄金の!
なあんだ。そうなんだ。
きみは唐突に理解する。
黄金探偵は軽やかにとんぼがえりをうつ、
すると世界はいともたやすく反転し、
きみはきみであるままきみではなくなり、
世界は蒼白の黄金。
(連作「中有の物語」より)
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