自然治癒/千月 話子
薄暗い軒先で
植えてもいないのに咲いている
高貴とは程遠い
紫の嫌な匂いを放つ花を
じっと 見ていた
「毒に彩られた花やね。」と教えてくれた
少女の丸くかがんだ背中から
羽根のような骨が浮かんだ
白い指先を
根元から引き抜かれた どくだみの
泥が汚す
嫌いだよ、この花。
「お薬になるのよ。」と
薄く微笑んだ口元が赤味差し
気が付けば探していた
あの花を 彼女のために
青紫のあやめ咲く
池のほとりで写真を撮った
クリーム色のワンピース
羽織った朱色のカーディガンなど
気にしながら 気遣いながら
「ごめんね。」と 小さくし
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