円原視座/木立 悟
嵐の夜
白と黒の町
礫(つぶて)のなかの
廃屋をめぐるまわり道
螺旋階段に立つ人々
雨のなかの天使を見下ろしている
瞳から瞳へ落ちてゆく滴
水彩の夜の天使
記憶の門のそばに立つ
どこか高いところに居て
雲に映る影を見ている
動く雲
動かない影
地はかがやき 鏡の音になり
空は遠い
まぶしく 遠い
夜明けの光のなかに
原の神は消えてゆく
廃駅のかたわらに立つ天使
途切れた線路の向こうを見ている
音はすぎてゆく
光は増してゆく
羽の上
消えかけた世界の上
弔いのように歌が降る
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