実験城砦/塔野夏子
此処は昔風でそれでいて未来的な
実験城砦
此処に居て僕のすることは
純粋であり続けること
その純粋を自ら頑なに
裁き続けること
此処には僕の他誰も居ない
そして僕はほとんどの時を
高い塔の青白い窓辺で過ごす
思春期じみた厭世と
可憐な自虐を喰みながら
かつて居たことのある世界を
遠く見はるかしている
さびしいとしても仕方ない
僕に似合う現実よりも
僕に似合う虚構の方が
あまりにも多いのだから
僕は此処を離れないし
誰も僕を連れ出しに来られない
夢という夢が 結晶化する迄は
僕は此処に居て
純粋であり続けるのだ
そしてその純粋を自ら頑なに
裁き続けるのだ
青白く醒めた意識のもとで
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