世界機械/茶釜
僕らには何らかの足と
時間があるのに
階段はいつも
非常口の奥で
しんとしている
「何階ですか?」
機械のゆみこが訪ねると
「トナカイです」と
どこか遠くから
草原の風にのって
野生動物の声がした
機械のゆみこが
早くて優しくて
がんばりやさんなものだから
だれもかれもが
それがプログラムである事や
自分達のちからを
すっかり忘れてしまう
いつか階段達は
腕まくりをした男の
白いワイシャツの袖からのぞく
野性のにおいと
足のない冷蔵庫の重たさと大事さを
教えてくれていたのかもしれない
時々は
ベンチにもなって
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