通過電車/A道化
 




正確な、正確な、階段を
カン、カン、落下、してゆく音で
冬の風が半音上がって
度重なる半音分の痛みが次々に
刺さっては馴染んでゆくこめかみ
更に
視覚
という切れ目へと
わたしの、視覚という切れ目へと
露呈するプラットホーム、の、朝の
白線の内側までお下がりください
白線の内側までお下がりください
のとき
冷たい白線へ降り立つヒールは
気負い、冷たい白線選んで降り立つ
わたしを支える唯一の芯として
ああ、もう、ぎりぎりなのだから
白線の内側までお下がりください
白線の内側までお下がりください
毎朝、たった一度
ええ、たったの一度でも
白線の内側まで下がったらばわたしは
何処までも際限なく下がってゆきます
そしていつの間にか
幾つもの電車を失ったプラットホームにて

冬の風は既に音を超えてしまって




2006.2.19.
   グループ"四文字熟語"
   Point(13)