薄荷飛行/A道化
合いたくて
合いたくて
閉じ篭る傷のような胸、を震わす、脈拍という水音は
水面に似た、例えば窓に合いたくて
合いたくて
開きたての傷のような喉、を震わす、息という泡は
水面に似た何かに合いたくて、けれど
叶わずぬかるむわたしの此処で、ぬるい舌は
銀色透ける魚ではないことを恥じ入る
ああ、
可愛い、君、
つ、
と、ついばめばいい
未だ濡れているけれど既に暗い、空いた硝子瓶の口を
つ、つ、
ついばめばいい
そうすれば、遠い、青い、冷たい飴の記憶で
水音より泡より銀色透ける魚になるよりずっと透明に、風になり
合いたかった筈の水面を、す、と破る、そして
あ、
わたし、今、
薄荷だった空にゆく、
2006。06。30。
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