姫百合野/石瀬琳々
驚いて
かかえていた花々をとり落とす
花は散り 草は散り 獣は啼きさけぶ
少女の傍(かたわ)らをすり抜ける風
少年が大事にしていた鷹羽の矢は
赤い裳裾を射抜いて刺さる
獲物はとり逃がしたか
夜明けから追い続けた獲物は
夏の野は風の恋歌(マドリガル)
姫百合の花咲く野で
潤んだ瞳が少年をとらえる
ゆっくり近づいて来る凛々しい姿は
夢に見た荒ぶる神のよう
恋はまだ始まったばかりだ
この一瞬にも
※ここでの姫百合は「小さい百合」の意で使っています。
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