春にうまれたあなたのこと/藤丘 香子
れは季節のあちらこちらに散らばり
そのほとんどを見つけ出すことは
とびっきり難しい
あなたの車窓にも見えるだろうか
※
見覚えのある景色の中では
つま先が空を見る
遥かな空を見上げ計測してみる
あなたは遥かで
あなたは空で
あなたは春で
そうしてあなたは
いちばん近いところに
いちばん近いところに
つま先が空を向いている
※
林の中にも季節があり
気がつかない命の準備がある
そうして循環の中に秋があり
知っている温度があり
かつて耳を澄ましていた春がある
あなたは春にうまれ
わたしは秋にうまれ
季節の中で咲く花がある
花を咲かせる本当の意味を知る
という贅沢は
新たな空腹を生む
そうしてくりかえす営みの中で
時期に逆らわないことの全てと
知らないということに
気付いていくのかもしれない
わたしは秋の林を歩いている
贈り物はまだ届けられそうにもない
遥かな空
あなたは春にうまれた
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