つづら坂/ワタナベ
 
つづら坂のてっぺんが赤く燃えて
曲がり角のそれぞれに暗がりが生まれる
それがくねくねと蛇のように眼下の町へ
影法師が一組
手前の角の煙草屋の暗がりからあらわれて
穏やかな夕日にそっと目を伏せると
そのまま背後のたそがれの中に溶けていった

煙草屋の軒先にうずくまった暗がりから
誰かが手招きしているような気がして
たずねてみると名前が欲しいと言う
それは私にとって
必要のないものに思われ
私は彼にくれてやった
すると今度は名前を呼ぶ声が欲しいという
私は彼に乞われるままに
次々に私を暗がりにくれてやった
彼は私に礼を言うと
やはり背後の夕日の中へ溶けていくのだった
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  グループ"■ 現代詩フォーラム詩集 2005 ■"
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