スタンダード/大村 浩一
 
                   − 素子へ、特別版 −


子供の頃は戦後のモータリゼーションが
発展し始めた時期で
うちの車は初代パブリカのデラックス
その頃は車のグレードと言ったら
スタンダードとデラックスの
2つしか無かった
デラックスにはラジオが付いていたが
スタンダードには無かった
デラックスは上品な薄茶色だが
スタンダードはくすんだ青鼠色だった
デラックスのバンパーは銀に輝くクロムめっきだが
スタンダードのほうはペンキ塗り
デラックスの窓にはブライトな銀のモールが付いていたが
黒いHゴム窓で、地味で覇気の無いスタンダードは
子供心にもみすぼらしく
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