詩群「その海から」(01〜10)/たもつ
 

栞だと思ったら
あなたの目だったので
どこまで読んだか
もうわからない



04

箪笥の引き出しを開けたまま
男は寝た

朝起きても
引き出しは開いていた

七時の時報を聞いて
男は部屋を出た

終日
そのような感じだった



05

ショウリョウバッタ
その隣に他のバッタの亡骸
その隣に曲がった草の形
隣に朽ちた部品
そして断片
人と呼ぶには確かに
遠いところだった



06

尻尾だけを残し
豚たちは行く

残された尻尾は
光らない蛍のように
ただ空を飛ぶのだった

わたし、は
ひとり、のそ
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