虚偽と忘却のエピソード/atsuchan69
ここさ」
「じゃあ、またな」
しっかりとした足取りでアスファルトの路面に立ち、沈む夕日とともにかなり乱暴な速さで走り去るYのクルマを、わたしは努めて笑顔で見送った。
すると上着の右ポケットで携帯が鳴った。
部長からだ、
「やっと繋がった。もう、ずっと何度も電話しているんだぞ。今日は一日じゅう、何処をほっつき歩いていた? それで、とにかく例の商談はほぼ成立した。しかし先方は、君でなければ契約書には判を押さないと言っている。明日の朝一番で直行しろ。悔しいが、ちゃんと話がまとまったら君は間違いなく昇進だ。オメデトウ、そしてこの大馬鹿野郎のオタンコナス! ちんぽこ噛んで死んでしまえ」
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