虚偽と忘却のエピソード/atsuchan69
 
 「よし、ではそこに連れて行ってくれ」
 Yは肩を窄め、
 「ふぅ」と、溜息をもらして結局わたしに従った。

 淡いトワイライトの光。
 リフトの扉が開いたとき、わたしは自分の眼を疑った。
 地獄のさらに真下の階層‥‥。そこは見慣れた首都高速道環状線の入り口で、ETCのゲートをくぐるとクルマは一瞬のうちに加速し、Yは無事にわたしを自宅付近の某所へと運んだ。
 「なんてことだ。ここはわたしの住んでいる町じゃないか!」
 するとYが、いつになく冷淡な顔で言った、
 「くれぐれも言っておくが、ここでは曲がったキュウリは存在しない。もちろん、ここで暮らす人々はかぎりなく自由で平等であるが
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