駅・品川にて/たりぽん(大理 奔)
枕木の間に蒔かれた砕石
それぞれの名前は知らない
久しぶりに訪れた東京のそれ
が、今日の、そしていつもの。
「思い出せない」ということを「忘れてしまう」と言うらしい
だから「知らないまま」のほうがましだなんて。それが今日の。
小さな傷なのに忘れない
「思い出せるよう」に刻まれた
から。刻んだから。刻んだから
ほら古代の石壁に堀込まれた
王の墓碑みたいに尊いじゃない?
文字は軽すぎて刻めない
鉛筆、声は重すぎて沈んでいく
沈殿、黄色い盲人用タイルが危険を隔てる
距離、輪郭が世界をどうしようもなく
かえていく、
危険の向こうに砕石が
それぞれの名前もなく
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