◆硝子傷/千波 一也
ひと知れず眠り深まる硝子傷なさけに託した夢の数だけ
鋭さは傷つかぬこと自らが裂いたものにも怯えること無く
いつくしみ囲いを厭わぬいばら織り潤んで消える虹のひとひら
浴びながら覚えてしまう口笛を誰かの箱に置き去りの午後
つくられた哀しみならば喜んで擦り合わせよ紫のはな
拾えない欠片の底をこまやかにわたる波間は青よりも青
添えるべき綺麗な言葉に消えてゆく窓の硝子は閉じられたまま
ときを追う声をあつめて空はるか陽射しひとつも旅人に代え
素手がため素手を離れるその素手の握り締めたる水色の鍵
混ざりあう純真なればよこしまも器をそそぐひと筋の雨
さえぎられ炎は白く濁りゆく風から風へひとの手に乗り
帰路はまだ夕日の丘の工房で仕上がりを待つ数百の熱
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