名前を呼んで/銀猫
 



その愛しい指が
わたしの名を綴ったからといって
距離は変わらずなのだけど


無機質なディスプレイに
時折運ばれる便りの
密やかなときめき


それは
一群れのシロツメクサから四つ葉を見つけた
そんな胸の明るみに似て
簡単に笑顔を誘う



眠られぬ夜の
他愛なき会話

少しの時差と
季節の先行と

こころでしか聞けぬ声と
目を閉じたときだけの
表情と
互いの背の後ろを
きっと同じく流れるうたと



恋の語らいも無く
さらわれてゆくこころなら
せめてわたしの名前を呼んで



おやすみ、のあとに
わたしの名前を呼んで



距離は変わらずなのだけど




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