熱射病/はらだまさる
 
ないからだ、とラカンさんに笑われた。ラカンさん、っていうのはブッダガヤの一部の若者のヒーローだ。その他の善良な市民からみれば、質の悪いヤクザだ。仕事もろくにせず、筋骨隆々の威勢のいい若者を手なずけて日本語を巧みに操り、毎日酒を呑んで牛肉を喰い、宗教に唾を吐いて神さまの名を名乗っていた。今回の、二度目になるブッダガヤ訪問はラカンさんに会いたい、というのが本音だったのだけれど、ちょうど彼が雨季を避けるようにネパールに旅立った後のことだった。

                  汽車は明日にならないと来ない、と彼は言った。木陰で眼を閉じて風に吹かれるまま寛いでいると、村人がわらわらと集りだして、そ
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