憧れの人に会いに青い海を渡ろう/虹村 凌
いるのが見えた
手を伸ばして捕まえると
その小さな硬い体から
弱りかけた
それでも小さな生命力を感じたんだ
何かいい事した気になって
まだ満ちるには時間がかかりそうな砂浜の上に放した
波打ち際に戻って気をつけてよく見ていると
それ以外にも数々の虫が波に飲まれてしまっていたんだ
恐らくこの海岸のずっと先まで
そうやって虫が飲まれていってるんだろうし
この海岸だけじゃなく
日本中で世界中でそうなってんだろう
と考えると
逆に彼だけを救出した気になっていた自分が恥ずかしくなってきたんだ
何と言う偽善!
また恥が増えたよ
煙草の灰が落ちて波に飲まれていった
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