憧れの人に会いに青い海を渡ろう/虹村 凌
しばらくすると
先ほどのカナブンかは分からないけれど
一匹の甲虫が海に向かって飛んでいくのが見えたんだ
それが彼のやりたい事なのか
ただ明るい方向に飛んでいってるだけなのか
もしくは運命を悟っているのか何なのか知らぬが
言いようの無い
得体の知れぬ感情に襲われて
「何だそれ」と思わず言ってしまったんだ
思わず言ってしまったんだ
海を越える蝶がいるのは知っているが
海を越える甲虫は知らない
生命
生命
生命
食物連鎖?
俺が死んだら
みんな喰ってくれんのかな
彼女は聞いたんだ
「この海の向こうには何があるの?」って
それが地球儀の上の話じゃな
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