創書日和【結】結線/大村 浩一
妻が組紐を編んだ
寿ぎの色の紐を選び
清めの石を結わえた
結び目はゆらゆらと
日々を遠ざかっていく
思わぬ梢を揺らしながら
見えない網は遥かな岬にまで届いた
自分が結び目だとは思わなかった
僅かな瞬きの合間に
無から現れ
無へ帰っていく
結び目
終わりの時は
死ぬのが先なのか
別れるのが先なのか
目の前に居るのに
「別れる」というのも
妙だ
どこからほどけるか判らない
娘が私の紐を引っ張る
諦めかけていた言葉を
もう一度 結び直す
古犬は応えようと
老いぼれた身体を揺すり起こした
2010/5/20
大村浩一
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