降り来る言葉 XIV/木立 悟
星の夜の木々
根を隠す原の音
静かに横たわるけだもの
原のむこうは蒼
蒼のむこうは原
花びらが
蝶を知らずに
水際に降りてくる
葉の星へ
穂の星へ
手のひらの奥から生まれる波
生まれては 生まれては
遠のく波
触れては 触れては
遠のく波
星の行方
波の行方
追うことはない
やってくるから
分かれ 分かれ
分かれつづけて
見えなくなって
ここへくるから
磨かれることなく鏡になる音
手をとる手からこぼれ落ち
くすぐるような笑み映す音
楽器でもあり奏者でもある
金にかがやくけだものの声
見えない波を歌いつづける
ふたつの星を奏でつづける
蝶と花びらを映す水
揺れる揺れる明るい日
蝶から水へ花びらへ
静かに震えが伝わる日
音はひとり
音を見ていた
緑の鏡の翼に映る
午後の双子の街を見ていた
原から原へと打ち寄せる
いのりのような声のなかで
白い白い羊を映した
金の奏者の瞳を見ていた
前 次 グループ"降り来る言葉"
編 削 Point(1)