降り来る言葉 XXIV/木立 悟
 



瞳のかたちの夜の食卓
ひとつの炎が揺れていて
他には何も置かれていない
椅子には誰も座っていない


波に斜めに刺さる輪があり
光の泡をこぼしている
あちこちにぽつりと灯るむらさき
遅れて曇にとどくむらさき


遠去かりつづける空の背に
ふたたび水が流れるとき
ひとつの響きを抱えたものが
自身のうつろに気づくとき


何もないところを奏でている
応えは指を過ぎてゆく
夜の白はやわらかな白
汚れたものだけが受け取れる白


音を聴こうとするものと
音を聴くまいとするもののあいだに
金と緑は流れつづけて
羽は不在の胸の苦しさ



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