降り来る言葉 LXVI/木立 悟
川辺の泥に倒れたまま
扉はひとりうたっている
烈しい生きものの光が
近づいてくる
夜を焚くむらさき
自らを混ぜるむらさき
羽の切れはしを
こぼすむらさき
研がれた木の通りを
水は滑り降りる
家々の入口はまだ
草に覆われている
光 右
光 石
寒さはまぶしく
午後の手を振る
崖の花が
水に映る
青空が
瀧に落ちてゆく
呼吸の森や鏡の森
少しの震えに曇る森
午後の水たまりに落ちる枝
形骸を残し
どこまでもどこまでも沈みゆく
霧や霞の重なりの底から
かすかに届く光の口笛
石の街の屋根
[次のページ]
前 次 グループ"降り来る言葉"
編 削 Point(3)