降り来る言葉 XXXVII/木立 悟
光と溝
退いては抱かれ
退いては抱かれる
星がひとつ
記憶に添う
顔の羽毛
名づけるまでもない名もなきもの
うたの切れはし
無価値の帽子
遠のく音からさしのべられる手
星の巡りにつかまることなく
蛇は背中を見つめている
おまえの肺の香辛料を
おまえの子孫は憎むだろう
それでもおまえは
かまわなくていい
夜に満ちる杯
水から消えることのないにおい
色と指にだけ告げてゆく
海おおう鳥のついばむ火
人のものではない響きが集い
外灯の羽音を喰んでいる
ほのおのかたち ほのおのかたち
なにものでもないほのおのかたち
己れを持たな
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