降り来る言葉 LV/木立 悟
木の前に立つ影
何処を向いているのか
わからない影
月の鎌
ふりかざされ
ふりおろされることなく
切られる夜
鏡のなかの道は笑い
打ち上げられたかたちを見せる
遠い揺れ 明るい霧
海に突き出た
枝の上の森
実は実り
落ちては呼吸し
曇を曲げ
空を曲げる
生糸の行方
夜をなぞる
矢印を知らぬものが描く
矢印のように
はじまりから抜け出せぬ夜を
知っていながら請いつづける
鳥に重なる鳥
羽の隙間すきまの
新たな羽
ひと足ごとに縫う言葉
眠りでもなく目覚めでもなく
ひらかないまま花で
[次のページ]
前 次 グループ"降り来る言葉"
編 削 Point(4)