標識さん/ななひと
識があるんですけど…」すると町役場の人はちょっと眉をつりあげて、こう言った。「ああ、あの標識ね。よく聞かれるんだけれども、あれは町が立てたんじゃないですよ。あそこは私有地でね。そこの所有者が立てた看板なんで、我々にもわからんのです」。あれは標識ではない。看板だと。看板だとしても、何のためにあんな看板を…。私はさらに追求してみた。「看板だとしても、あんな標識めいた看板を立てることになんの意味があるんですか?」町役場の人は肩をすくめて言った。「さあ、立てた人はね。もう死んじゃってるんです。私有地ですからね。我々にはどうすることもできません。」
そうなのか。誰かその看板を立てた人がいる。しかしその人は
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