標識さん/ななひと
 
人はもう死んでしまっている。それじゃあ誰にも意味がわからないはずだ。しかしあんな看板を立てるのは、どういうつもりなのか。立てた人は死んでしまっているとしても、何らかの意図があってあの看板(標識)を立てたはずだ。…しかし、私有地ということは、仮にその人が死んでしまっているとしても、今も所有者がいるはずだ。今の所有者は誰ですか?と聞くと教えてくれた。ここまで来たら、その所有者に尋ねてみるしかない。
「あの標識はね、生きているんですよ」
はあ?と私は思った。これはその土地の所有者が真っ先に言った言葉だ。「標識」が「生きている」とは何ぞや。標識は標識でしょう。鉄のかたまりでしょう。生きているはずがない
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