野良犬は果実の名など知ることもなく/たりぽん(大理 奔)
たが確かめた果実の中身は透明で
それはいくつかの小さな仕組みを隠し
釣り人は果実を針の先に突き刺し
波の、その奥の、命をつり上げようとする
水平線はしょっぱかったとあなたはいう
葡萄の滴は、そうではありませんでしたと
溶けていくものも、ちがいました
でも、野良犬は果実の名など知ることもなく
渡し船は、馬を放牧する岬の断崖で
誰も待っては居なかった
だから船頭も居なかったし、櫂も帆もなく
せいぜい、船のかたちをしているのが
精一杯なだけの名前だった
綺麗なものばかりを
追いかけるのであれば
その船には乗れないと
釣り人が忠告したが、僕たちは
綺麗なものになりたいのだと
かたちに名前を付けて船を漕ぎ出した
どちらも、こちらも水平線で
夜になって輝く美しいものの、美しさだけを教わったために
さまよい続ける
名前だけのものでありたい
ぬくもりだけを確かめ合えたら
ぷつり、ぷつりと
様々にうち寄せて
そんなふうに砂浜で
野良犬に食われて
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