さかな。/佐々宝砂
 
見えた。
目を逸らした。
ひとつの単語が頭に浮かぶ。

さかな。

それは小さなころから男のあだ名であった。
男の顔を見れば誰でもなるほどと思うだろう。
頭全体が妙に平べったく極端に鼻が低く
丸く飛び出た両眼はあまりにも離れていた。
おまけに原因不明の皮膚病で
肌がいつもカサカサしていて
まるでウロコのようだった。

俺だけじゃない。
ばあさんがそうだ。
息子がそうだ。

さかな。

いまいましい。魚は嫌いだ。
生臭い。べたべたする。気持が悪い。
あんなもん食べるやつの気が知れない。

昔を思い出して今さら憤慨しながら
男は箸で肉じゃがの小鉢をつつ
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