球体採取/暗闇れもん
壊れそうな気がしていた
一瞬でも気をぬくとパンパンに張り詰めた風船のように
空気を全て吐き出して
しぼみ何処かへ飛んでいきそうだった
会社での私はそんな感じなのかもしれない
感情が分からないと言われ
長く付き合った彼女は私から離れていった
感情の表し方がわからなかった
表情の作り方がわからなくて笑顔にさえなれない
表情に乏しいことは私にとっては日常で
感情をぶつけ泣いて怒る彼女が新鮮だった
特に怒りの表情が好きだった
むき出しの感情が遠慮なしに私にふりかかる
怒りの目
私を一瞬で他人に変える目
いともたやすく彼女は手の中で冷たくなる
銀色のスプーンですくい取って
飲み込むのに少し苦労するね
お腹の中でしゅわしゅわと怒りが溶ける音がする
色とりどりのアンティークの薬ビンに
色とりどりの球体が並ぶ
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