雪月花/千波 一也
わたしを生んだ
女をわたしは知らない
影も匂いも
どんな音を発するのかも
なにひとつ知らない
わたしを抱いて
わたしを褒めて
わたしを叱って
わたしを守って
わたしを
ここまで
育ててくれたのは
わたしの母だ
この世にただひとりの
わたしの母親だ
わたしを捨てた
女のことをおもうとき
わたしの母は
どんな気持ちで
わたしを子どもにしたのだろう、と
少しだけ寂しくなる
古いアルバムを
開けば
素直な笑顔と
素直な反抗と
素直な恥ずかしさと
素直なはしゃぎが
ならんでいる
な
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