雪月花/
千波 一也
なんと幸せな
家庭で育ったのだろうと
こころからおもう
わたしの戸籍を取ると
養母という言葉が
痛々しく
印字されていて
まったく覚えのない女の名前も
堂々と
印字されている
雪と月と花と
めぐりくるものたちは
母から教わった
雪と月と花と
うつくしいものたちの
おもてと裏とは
母から
巣立って
いつしか覚えた
けれど
雪、月、花、
たいせつな何かを
数え忘れている気がする
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