女の一生/なかがわひろか
「女の人生はまるで芝居だ」と云ふ貴方
貴方は分かったように云ふけれど
命を賭けた名演技
貴方に添うその女も
科白をなぞっているだけよ
乞い買われて
飼いならすかのような錯覚
貴方方はいつもそう
タバコの燻る部屋のまぼろしに紛う
時に涙を流せど
化粧を落とす訳にはいかない
白く滴り落ち行く女の武器は
ナイフより尖る
「芝居に騙される男は馬鹿だ」と貴方は云ふけれど
騙し騙され合うことに
頭の良し悪しはいらないの
女の生きていく道には
標識などはありはしない
あるのはただ匂いに焦がる
雄と雌の誘惑
(「女の一生」)
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